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居宅介護支援事業所が特定事業所加算を算定する8つのポイントを解説

元山 ゆず香

監修者

介護福祉士

元山 ゆず香

大学を卒業後、特別養護老人ホームにて現場業務に従事。その後、福祉系大手企業に入社し、エリアマネージャーとして、施設介護事業・居宅介護事業・障害福祉サービス事業でのエリアマネジメント・行政対応を経験。また、法人本部に異動し教育部門・監査担当部門の部長を歴任。現在は全国の介護・障害福祉事業所の支援やセミナーの開催、DXO株式会社での介護関連事業の支援などを実施。

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目次

質の高い介護サービスを積極的に提供する事業所では、特定事業所加算を算定することができます。

特定事業所加算を算定できる事業所に「居宅介護支援」が挙げられます。居宅介護支援とは、要介護者が身体的、精神的な状況に合わせた適切なサポートを受けながら自立した生活を送る支援をおこなうサービスです。

この記事では、居宅介護支援の特定事業所加算について、令和6年度障害福祉サービス等報酬改定を踏まえたうえで算定要件を解説していきます。

特定事業所加算とは「居宅介護支援事業所の質のよさ」を評価する加算

特定事業所加算とは、一定の条件を満たしながら質の高い介護サービスを提供する介護事業所を評価する加算のことです。介護保険法に基づき、訪問介護サービスと居宅介護支援において適用されています。

居宅介護支援における特定事業所加算では、配置人数やサービスの提供体制、地域包括支援センターとの連携などが評価され、質の高いケアを提供する居宅介護支援事業所で算定できます。

特定事業所加算を居宅介護支援事業所が算定するメリットとデメリット

居宅介護支援事業所において特定事業所加算を算定するメリットは以下の2つです。

特定事業所加算を居宅で算定する2つのメリット

メリット1. 利用者の負担なく収益をあげられる

居宅介護支援において、特定事業所加算を算定できるようになると、利用者1人あたりの単位数が100〜505単位に上がるため、事業所として収益の改善が望めます。

居宅介護支援の特定事業所加算の単位数は以下の通りです。

 単位数/1ヵ月
特定事業所加算(Ⅰ)519単位
特定事業所加算(Ⅱ)421単位
特定事業所加算(Ⅲ)323単位
特定事業所加算(A)114単位

メリット2. 質の高い事業所であると客観的評価が高まる

特定事業所加算を算定するためには、研修を充実させたり、細かい申し送りをおこなったりしながら厳しい算定要件を満たす必要があります。

すべての介護事業所でこれらはおこなわなければならないことですが、特定事業所加算を算定する事業所では、よりしっかりとおこなわれていることが認められるため、利用者が事業所を選ぶ際にも、質の高い事業所をしてアピールすることができます。

特定事業所加算を居宅で算定するデメリット

居宅介護支援事業所において特定事業所加算を算定することには、デメリットもあります。

  1. 算定要件が難解で返還のリスクがある
    特定事業所加算の算定要件は厳しく難しいものです。しかし、要件の理解が不足したまま運営を開始してしまうと、運営指導で指摘を受け、加算の返還を求められる場合があります。

    特定事業所加算の要件は複雑で、自治体によってルールも異なります。実際に運用する際は、厚生労働省や各自治体の資料を確認したり、問い合わせをしたりしながらおこないましょう。

  2. 加算を維持するのに手間がかかる
    特定事業所加算は届出後も要件を満たし続けなければなりません。研修、指示報告、人材要件の割合の確認など、運用に関わる事業所の業務が複雑になります。
    算定開始後に要件を満たさなくなった場合には、加算の変更や廃止を届け出る必要もあります。

【特定事業所加算】居宅でおさえるべき8つの算定ポイント

居宅介護支援における特定事業所加算の算定にあたって抑えるべきポイントを8つ紹介します。

1. 人員配置(主任ケアマネジャー、ケアマネジャーの人数)|兼務可能

  • 居宅介護支援の提供にあたる特定事業所加算の算定において、常勤専従の主任ケアマネジャーを配置する必要があります。
  • 常勤専従の主任ケアマネジャーは、特定事業所加算の算定をおこなう事業所の業務に支障がない場合は、同一敷地内にある他の事業所の職務を兼務することができます。
  • 常勤専従の主任ケアマネジャーとは別に、主任ケアマネジャーを置く必要があります。

それぞれの特定事業所加算における主任ケアマネジャー、ケアマネジャーの配置人数は以下の通りです。

 特定事業所加算(Ⅰ)特定事業所加算(Ⅱ)特定事業所加算(Ⅲ)特定事業所加算(A)
常勤専従の主任ケアマネジャー2人以上1人以上1人以上1人以上
ケアマネジャー3人以上3人以上2人以上1人+常勤換算方法で1人以上

2. 週に1回以上の定例会議の開催と会議内容

特定事業所加算の算定に当たって「利用者に関する情報又はサービス提供にあたっての留意事項に係る伝達などを目的とした会議」を週に1回おこなわなければなりません。会議では、利用者の処遇方針や、ケースの改善方策などが話し合われます。

会議の内容は議事録を作成し、2年間保存することが定められています。また、個人情報の取り扱いが十分に配慮されれば、オンライン会議も認められています。

会議では、以下のような議題が含まれていなければなりません。

  • 現に抱える処遇困難ケースについての処遇方針
  • 過去に取り扱ったケースついての問題点及びその改善方策
  • 地域における事業者や活用できる社会資源の状況
  • 保健医療及び福祉に関する諸制度
  • ケアマネジメントに関する技術
  • 利用者からの苦情の内容及び改善方針

3. 24時間の連絡・対応体制の整備

特定事業所加算を算定する事業所では、24時間連絡可能な体制を確保し、必要に応じて利用者やその家族などの相談に対応する体制を確保しなければなりません。

ここでいう、「24時間連絡可能な体制」は、常時担当者と利用者が連絡を取ることができる体制のことです。事業所内のケアマネジャーが交代で対応することも可能です。特定事業所加算(A)を算定する場合は、携帯電話等の転送による対応も可能です。

4. ケアマネジャーへの計画的な研修

特定事業所加算を算定する事業所では、ケアマネジャーに対して研修を計画的におこなわなければなりません。

研修計画は、個別具体的な研修の目標、内容、研修期間、実施時期等について、毎年度少なくとも年度が始まる3ヵ月前までに次年度の計画を定めなければなりません。管理者は、研修目標の達成状況を適宜確認して、必要に応じて改善の措置を取る必要があります。

特定事業所加算(A)を算定する事業所では、連携する事業所との共同開催による研修実施も可能です。

5. 困難事例への対応

特定事業所加算を算定する事業所では、地域包括支援センターでの支援が困難と判断された方を積極的に受け入れ、居宅介護サービスを提供しなくてはなりません。そのため、常に地域包括支援センターとの連携を図ることが必須となります。

6. 特定事業所集中減算に非該当

特定事業所加算を算定するにあたって、事業所は特定事業所集中減算の適用を受けていない必要があります。

特定事業所集中減算とは、居宅介護サービス事業所において公正中立なケアプランの作成のために、同一事業者によるサービス提供の偏りを防止するための減算です。

特定事業所集中減算の適用要件は以下の通りです。

  • 正当な理由なく、6ヵ月前の間に作成した居宅サービス計画に位置付けられた訪問介護サービスの提供総数のうち、同一のサービス事業者によって提供された数が、80%を超えている。

対象サービスは、訪問介護、通所介護、通期密着型通所介護、福祉用具貸与です。このうち1つでも80%を超えていると減算の対象となります。減産にならないように、定期的に確認することが大切です。

7. ケアマネジャー1人あたりの利用者数

特定事業所加算を算定する事業所では、ケアマネジャー1人あたり居宅介護サービスを受ける利用者数が45人未満であることが必要です。また、特定事業所加算(Ⅱ)を算定する事業所では50名未満と定められています。

8. 別の法人が運営する居宅介護支援事業所との共同事例検討会や研修会の開催

特定事業所加算を算定する事業所では、ほかの法人が運営する事業所の職員も参加する事例検討会や研修会を自ら率先しておこなわなければなりません。

また、事例検討会や研修の内容、実施時期、共同で実施する他事業所について、次年度が始まるまでに計画を定める必要があります。年度の途中で加算取得の届け出をおこなう場合には、届け出すまでに計画を定める必要があります。

居宅の特定事業所加算は4種類|算定要件を解説【2024年最新】

1. 特定事業所加算(Ⅰ)|要介護3~5の利用者が4割以上

特定事業所加算(Ⅰ)の算定要件は以下の通りです。

  1. 常勤専従の主任ケアマネジャーを2人以上配置している。(業務に支障がない場合は兼務でも可)
  2. 常勤専従のケアマネジャーを3人以上配置している。(業務に支障がない場合は兼務でも可)
  3. 利用者の情報やサービス提供上の留意事項などの伝達を目的とした会議をおおむね週1回以上、定期的に開催している。
  4. 24時間連絡体制を確保して、必要に応じて利用者等からの相談に対応できる体制を確保している。
  5. 加算を算定する月の利用者のうち、要介護3〜5の者の割合が40%以上である。
  6. ケアマネジャーに対して、計画的な研修を実施している。
  7. 地域包括支援センターから支援困難事例を紹介された場合でも、対応できる。
  8. ヤングケアラー、障害者、生活困窮者、難病疾患者等、高齢者以外の対象者への支援に関する知識等に関する事例検討会・研修会に参加している。
  9. ケアマネジャー1人当たりの利用者数が45人未満(居宅介護支援費Ⅱを算定している場合は50人未満)である。
  10. 介護支援専門員実務研修における科目「ケアマネジメントの基礎技術に関する実習」等に協力または協力体制を確保していること。
  11. 他の法人が運営する居宅介護支援事業所と、共同での事例検討会や研修会等を実施している。
  12. 必要に応じて、多様な主体等が提供する生活支援サービス(インフォーマルサービス)が包括的に提供されるような居宅サービス計画を作成している。
  13. 特定集中減算が適用されていない。

2. 特定事業所加算(Ⅱ)|常勤専従のケアマネジャーが3名以上必要

特定事業所加算(Ⅱ)の算定条件は、特定事業所加算(Ⅰ)の算定要件2〜4、6〜13に加えて以下の要件が必要です。

  • 常勤専従の主任ケアマネジャーを1人以上配置している。(業務に支障がない場合は兼務でも可)

3. 特定事業所加算(Ⅲ)|常勤専従のケアマネジャーが2名以上で可

特定事業所加算(Ⅲ)の算定条件は、特定事業所加算(Ⅰ)の算定要件3〜4、6〜13に加えて以下の要件が必要です。

  • 常勤専従の主任ケアマネジャーを1人以上配置している。(業務に支障がない場合は兼務でも可)
  • 常勤専従のケアマネジャーを2人以上配置している。

4. 特定事業所加算(A)|ほかの居宅介護支援事業所との連携で可

特定事業所加算(A)の算定条件は、特定事業所加算(Ⅰ)の算定要件3、8、9、12、13に加えて以下の要件が必要です。

  • 要件4、7、10、11については、ほかの居宅介護支援事業所との連携で満たすのも可
  • 常勤専従の主任ケアマネジャーを1人以上配置(業務に支障がない場合は兼務でも可)
  • 常勤専従のケアマネジャーを1人以上配置(業務に支障がない場合は兼務でも可)
  • ケアマネジャーを常勤換算方法で1人以上配置(ほかの事業所との兼務も可)

特定事業所加算を算定する居宅介護支援事業所のチェックシート

特定事業所加算を算定する居宅介護支援事業所の算定要件をまとめると以下の通りです。

算定要件

特定事業所加算(Ⅰ)

特定事業所加算(Ⅱ)

特定事業所加算(Ⅲ)

特定事業所加算(A)

常勤専従の主任ケアマネジャー

2人以上

1人以上

1人以上

1人以上

ケアマネジャー

3人以上

3人以上

2人以上

1人+常勤換算方法で1人以上

定期的な会議の開催

24時間連絡体制

(他事業所と兼務も可)

1ヵ月の利用者の40%が要介護3~5

計画的な研修

(他事業所と兼務も可)

地域包括支援センターの困難ケースの受け入れ

地域包括支援センター等が開催する事例検討会への参加

特定事業所集中減算を適用していない

ケアマネジャー1人につき、利用者45人未満

実務研修科目「ケアマネジメントの基礎技術に関する実習」に協力

(他事業所と兼務も可)

他社と共同での事例検討会や研修会の実施

(他事業所と兼務も可)

多種多様な利用者に向けた居宅サービス計画書の作成

居宅介護支援事業所の特定事業所加算に関するQ&A

居宅で特定事業所加算(A)を算定したいです。常勤換算の計算方法は?

常勤換算の計算式は「常勤職員の人数+(非常勤職員の実働時間の合計÷常勤職員の所定勤務時間)です。

計算をおこなうには、はじめに事業所に在籍する常勤職員の人数と1ヵ月(4週間)あたりの所定勤務時間を把握する必要があります。次に、常勤以外の職員全員について、1ヵ月あたりの実働時間を計算して合計します。

また、在籍している職員の中に休暇中の職員や、複数の職務を兼任する職員がいる場合には計算に注意が必要です。人員配置基準に配慮した正確な常勤換算をおこないましょう。

特定事業所加算の算定が難しそうです。居宅で算定できるほかの加算はありますか?

居宅介護支援事業所では、特定事業所加算のほかに、要件を満たすと9つの加算を算定することができます。

まとめ:特定事業所加算の算定要件は厳しいがメリットが大きい

今回は、特定事業所加算における居宅介護について解説しました。

算定にあたっての要件は厳しいですが、運用開始できると、収益アップが見込める体制を構築できることに加えて、ほかの事業所よりも質の高い事業所であることをアピールすることができます。

特定事業所加算の取得をぜひご検討ください。

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