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質の高い介護サービスを積極的に提供する事業所では、特定事業所加算を算定することができます。
特定事業所加算を算定できる事業所に「居宅介護支援」が挙げられます。居宅介護支援とは、要介護者が身体的、精神的な状況に合わせた適切なサポートを受けながら自立した生活を送る支援をおこなうサービスです。
この記事では、居宅介護支援の特定事業所加算について、令和6年度障害福祉サービス等報酬改定を踏まえたうえで算定要件を解説していきます。
特定事業所加算とは、一定の条件を満たしながら質の高い介護サービスを提供する介護事業所を評価する加算のことです。介護保険法に基づき、訪問介護サービスと居宅介護支援において適用されています。
居宅介護支援における特定事業所加算では、配置人数やサービスの提供体制、地域包括支援センターとの連携などが評価され、質の高いケアを提供する居宅介護支援事業所で算定できます。
居宅介護支援事業所において特定事業所加算を算定するメリットは以下の2つです。
居宅介護支援において、特定事業所加算を算定できるようになると、利用者1人あたりの単位数が100〜505単位に上がるため、事業所として収益の改善が望めます。
居宅介護支援の特定事業所加算の単位数は以下の通りです。
単位数/1ヵ月 | |
特定事業所加算(Ⅰ) | 519単位 |
特定事業所加算(Ⅱ) | 421単位 |
特定事業所加算(Ⅲ) | 323単位 |
特定事業所加算(A) | 114単位 |
特定事業所加算を算定するためには、研修を充実させたり、細かい申し送りをおこなったりしながら厳しい算定要件を満たす必要があります。
すべての介護事業所でこれらはおこなわなければならないことですが、特定事業所加算を算定する事業所では、よりしっかりとおこなわれていることが認められるため、利用者が事業所を選ぶ際にも、質の高い事業所をしてアピールすることができます。
居宅介護支援事業所において特定事業所加算を算定することには、デメリットもあります。
居宅介護支援における特定事業所加算の算定にあたって抑えるべきポイントを8つ紹介します。
それぞれの特定事業所加算における主任ケアマネジャー、ケアマネジャーの配置人数は以下の通りです。
特定事業所加算(Ⅰ) | 特定事業所加算(Ⅱ) | 特定事業所加算(Ⅲ) | 特定事業所加算(A) | |
常勤専従の主任ケアマネジャー | 2人以上 | 1人以上 | 1人以上 | 1人以上 |
ケアマネジャー | 3人以上 | 3人以上 | 2人以上 | 1人+常勤換算方法で1人以上 |
特定事業所加算の算定に当たって「利用者に関する情報又はサービス提供にあたっての留意事項に係る伝達などを目的とした会議」を週に1回おこなわなければなりません。会議では、利用者の処遇方針や、ケースの改善方策などが話し合われます。
会議の内容は議事録を作成し、2年間保存することが定められています。また、個人情報の取り扱いが十分に配慮されれば、オンライン会議も認められています。
会議では、以下のような議題が含まれていなければなりません。
特定事業所加算を算定する事業所では、24時間連絡可能な体制を確保し、必要に応じて利用者やその家族などの相談に対応する体制を確保しなければなりません。
ここでいう、「24時間連絡可能な体制」は、常時担当者と利用者が連絡を取ることができる体制のことです。事業所内のケアマネジャーが交代で対応することも可能です。特定事業所加算(A)を算定する場合は、携帯電話等の転送による対応も可能です。
特定事業所加算を算定する事業所では、ケアマネジャーに対して研修を計画的におこなわなければなりません。
研修計画は、個別具体的な研修の目標、内容、研修期間、実施時期等について、毎年度少なくとも年度が始まる3ヵ月前までに次年度の計画を定めなければなりません。管理者は、研修目標の達成状況を適宜確認して、必要に応じて改善の措置を取る必要があります。
特定事業所加算(A)を算定する事業所では、連携する事業所との共同開催による研修実施も可能です。
特定事業所加算を算定する事業所では、地域包括支援センターでの支援が困難と判断された方を積極的に受け入れ、居宅介護サービスを提供しなくてはなりません。そのため、常に地域包括支援センターとの連携を図ることが必須となります。
特定事業所加算を算定するにあたって、事業所は特定事業所集中減算の適用を受けていない必要があります。
特定事業所集中減算とは、居宅介護サービス事業所において公正中立なケアプランの作成のために、同一事業者によるサービス提供の偏りを防止するための減算です。
特定事業所集中減算の適用要件は以下の通りです。
対象サービスは、訪問介護、通所介護、通期密着型通所介護、福祉用具貸与です。このうち1つでも80%を超えていると減算の対象となります。減産にならないように、定期的に確認することが大切です。
特定事業所加算を算定する事業所では、ケアマネジャー1人あたり居宅介護サービスを受ける利用者数が45人未満であることが必要です。また、特定事業所加算(Ⅱ)を算定する事業所では50名未満と定められています。
特定事業所加算を算定する事業所では、ほかの法人が運営する事業所の職員も参加する事例検討会や研修会を自ら率先しておこなわなければなりません。
また、事例検討会や研修の内容、実施時期、共同で実施する他事業所について、次年度が始まるまでに計画を定める必要があります。年度の途中で加算取得の届け出をおこなう場合には、届け出すまでに計画を定める必要があります。
特定事業所加算(Ⅱ)の算定条件は、特定事業所加算(Ⅰ)の算定要件2〜4、6〜13に加えて以下の要件が必要です。
特定事業所加算(Ⅲ)の算定条件は、特定事業所加算(Ⅰ)の算定要件3〜4、6〜13に加えて以下の要件が必要です。
特定事業所加算(A)の算定条件は、特定事業所加算(Ⅰ)の算定要件3、8、9、12、13に加えて以下の要件が必要です。
特定事業所加算を算定する居宅介護支援事業所の算定要件をまとめると以下の通りです。
算定要件 | 特定事業所加算(Ⅰ) | 特定事業所加算(Ⅱ) | 特定事業所加算(Ⅲ) | 特定事業所加算(A) |
常勤専従の主任ケアマネジャー | 2人以上 | 1人以上 | 1人以上 | 1人以上 |
ケアマネジャー | 3人以上 | 3人以上 | 2人以上 | 1人+常勤換算方法で1人以上 |
定期的な会議の開催 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
24時間連絡体制 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 (他事業所と兼務も可) |
1ヵ月の利用者の40%が要介護3~5 | 〇 | ー | ー | ー |
計画的な研修 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 (他事業所と兼務も可) |
地域包括支援センターの困難ケースの受け入れ | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
地域包括支援センター等が開催する事例検討会への参加 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
特定事業所集中減算を適用していない | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
ケアマネジャー1人につき、利用者45人未満 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
実務研修科目「ケアマネジメントの基礎技術に関する実習」に協力 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 (他事業所と兼務も可) |
他社と共同での事例検討会や研修会の実施 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 (他事業所と兼務も可) |
多種多様な利用者に向けた居宅サービス計画書の作成 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
常勤換算の計算式は「常勤職員の人数+(非常勤職員の実働時間の合計÷常勤職員の所定勤務時間)です。
計算をおこなうには、はじめに事業所に在籍する常勤職員の人数と1ヵ月(4週間)あたりの所定勤務時間を把握する必要があります。次に、常勤以外の職員全員について、1ヵ月あたりの実働時間を計算して合計します。
また、在籍している職員の中に休暇中の職員や、複数の職務を兼任する職員がいる場合には計算に注意が必要です。人員配置基準に配慮した正確な常勤換算をおこないましょう。
居宅介護支援事業所では、特定事業所加算のほかに、要件を満たすと9つの加算を算定することができます。
今回は、特定事業所加算における居宅介護について解説しました。
算定にあたっての要件は厳しいですが、運用開始できると、収益アップが見込める体制を構築できることに加えて、ほかの事業所よりも質の高い事業所であることをアピールすることができます。
特定事業所加算の取得をぜひご検討ください。
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