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【令和6年改定】特定事業所加算における同行援護の算定要件4つを徹底解説

元山 ゆず香

監修者

介護福祉士

元山 ゆず香

大学を卒業後、特別養護老人ホームにて現場業務に従事。その後、福祉系大手企業に入社し、エリアマネージャーとして、施設介護事業・居宅介護事業・障害福祉サービス事業でのエリアマネジメント・行政対応を経験。また、法人本部に異動し教育部門・監査担当部門の部長を歴任。現在は全国の介護・障害福祉事業所の支援やセミナーの開催、DXO株式会社での介護関連事業の支援などを実施。

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障害が重い利用者に対して質の高い介護サービスを積極的に提供する事業所では、特定事業所加算を算定することができます。

特定事業所加算を算定できる事業所に「同行援護」が挙げられます。同行援護では、視覚障害や知的障害、精神障害のある利用者が外出する際に外出先に同行して道案内など必要な支援をおこなうサービスのことです。

同行援護において特定事業所加算の算定をおこなうためには、厳しい算定要件を満たす必要があります。

この記事では、同行援護の特定事業所加算について、令和6年度障害福祉サービス等報酬改定を踏まえたうえで算定要件を解説していきます。

特定事業所加算の同行援護における改定ポイント

令和6年度の改定によって、同行援護の加算要件が見直されました。改定後は、専門的な支援技術を有する人材を配置した事業所を評価できるように、加算要件の「良質な人材の確保」の要件の選択肢として、「盲ろう者向け通訳・介助員であり同行援護従業者の要件を満たしている者」の配置割合が追加されています。

参考:厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の概要

特定事業所加算を同行援護で算定する4つの要件

1. サービス提供体制の整備

サービス提供体制の整備には、以下の6つを満たす必要があります。

  1. 研修の計画的実施
    質の高いサービスを提供するために、職員全員に対して個別の研修計画を作成し、研修を実施しなければなりません。
  2. 定期的な会議の開催
    利用者に関する情報やサービス提供における留意事項の伝達等、職員の技術指導を目的とした会議を定期開催します。登録ヘルパーを含めて、全ての介護職員が介護に参加する必要があります。
  3. 文書等による指示とサービス提供後の報告
    サービス提供責任者が、担当職員に対して利用者に関する情報やサービス提供における留意事項を文書等で伝達してからサービスを提供します。また、サービス提供後には、担当職員から責任者へ適宜報告も求められます。
  4. 定期的な健康診断の実施
    事業主費用負担によって、1年以内に1回ごとに登録ヘルパーも含めた職員全員に健康診断を実施する必要があります。
  5. 緊急時における対応方法の明示
    特定事業所では、緊急時等における対応方針、緊急時の連絡先や対応可能時間帯を記載した文書(重要事項説明書等)を利用者に交付して、説明をおこなわなければいけません。
  6. 熟練した従業者による新任者同行研修の実施
    特定事業所では、新規採用した全ての職員に対して、熟練した職員の同行による研修をおこないます。

2. 良質な人材の確保

良質な人材の確保には、以下の5つを満たす必要があります。

  1. 介護福祉士を30%以上配置している。
  2. 実務者研修修了者や介護職員基礎研修課程修了者の割合が50%以上である。
  3. 常動の同行援護従事者によるサービス提供時間が40%以上を占める。
  4. 同行援護従業者養成研修及び国立リハビリテーションセンター学院視覚障害学科修了者等が30%以上である。
  5. 盲ろう者向け通訳・介助員で、同行援護従業者の要件を満たしている者が20%以上である。

3. 重度障害者への対応

重度障害者への対応は、以下を満たしている必要があります。

 

  • 前年度または算定日が属する月の前3カ月間における指定居宅介護の利用者の総数のうち、障害支援区分5以上である者及び喀痰吸引等を必要とする者の占める割合が30%以上であること。

4. 中重度障害者への対応

中重度障害者への対応は、以下を満たしている必要があります。

  • 前年度または算定日が属する月の前3カ月間における指定居宅介護の利用者の総数のうち、生涯区分4以上であるもの及び喀痰吸引等を必要とする者の占める割合が50%以上であること。

同行援護で算定できる特定事業所加算は4種類|算定要件と加算割合

特定事業所加算I|所定単位数の20%を加算

特定事業所加算Ⅰは、要件のうち「サービス提供体制の整備」「良質な人材確保」「重度障害者への対応」の3つを満たすことで、所定単位数の20%を算定できます。

特定事業所加算Ⅱ|所定単位数の10%を加算

特定事業所加算Ⅱは、「サービス提供体制の整備」と「良質な人材確保」の2つの要件を満たすことで、所定単位数の10%を加算できます。

特定事業所加算Ⅲ|所定単位数の10%を加算

特定事業所加算Ⅲでは、「サービス提供体制の整備」と「重度障害者への対応」の2つの要件を満たすことで、所定単位数の10%を加算できます。

特定事業所加算Ⅳ|所定単位数の5%を加算

特定事業所加算Ⅳでは、「サービス提供体制の整備」と「中重度障害者への対応」の2つの要件を満たすことで、所定単位数の5%を加算できます。

 満たす必要がある要件加算
特定事業所加算Ⅰ
  • サービス提供体制の整備
  • 良質な人材の確保
  • 重度障害者への対応
所定単位数の20%
特定事業所加算Ⅱ
  • サービス提供体制の整備
  • 良質な人材の確保
所定単位数の10%
特定事業所加算Ⅲ
  • サービス提供体制の整備
  • 重度障害者への対応
所定単位数の10%
特定事業所加算Ⅳ
  • サービス提供体制の整備
  • 中重度障害者への対応
所定単位数の5%

同行援護で特定事業所加算を取得するメリット・デメリット

加算を取得する2つのメリット

同行援護で特定事業所加算を取得することのメリットを2つご紹介します。

1. 収益の改善が見込め職員の給与改善によい影響を与える

同行援護の特定事業所加算の算定は、事業所全体でおこないます。そのため、すべての利用者の総単位数が5〜20%アップします。

特定事業所加算の算定をおこなうことによって、事業所の経済的な負担が軽減されるだけでなく、職員に対してほかの事業所よりも多くの給与を支払うことができます。職員の採用時にも、給与など他の事業所との差別化を図ることができるでしょう。

2. 質の高い事業所であると認められる

特定事業所加算は、必要な体制が整備され、質の高いサービスを提供する事業所を評価する加算であるため、この加算を算定できること自体が質の高いサービス事業所と認定されていることになり、利用者に向けても質の高い事業所であることをアピールすることにつながります。

加算を取得するデメリット

同行援護で特定事業所加算を取得することには以下のデメリットもあります。

  • 手間がかかる、何をしたらいいかわからない。

特定事業所加算を受けるためには、追加の手続きや書類の提出が必要な場合もあります。これによって事業所の業務が複雑化して、時間がかかったり、労力負担が大きくなったりする可能性があります。

特定事業所加算を取得する際には、厳しい要件を満たす必要があります。要件の確認を怠り運用をすると数百万〜数千万円の返還を求められる場合もあります。正しく要件を理解して運用しましょう。

また、要件を満たすために事業所が追加の負担を負うことになる場合もあります。また、特定事業所加算を受けることで他の助成金や補助金の対象外となることもあるので、注意が必要です。

特定事業所加算を同行援護事業所が算定する際の注意点

特定事業所加算を同行援護事業所が算定する際の注意点は以下の通りです。

指定事業ごとに要件を満たす必要がある居宅介護、重度訪問介護、同行援護の指定をそれぞれ取得する事業所が多く、特定事業所加算もそれぞれ取得するケースが多いです。

ここで重要なのが、それぞれの事業ごとに特定事業所加算の要件を満たしたかどうかを毎月確認することが必要です。同じ事業所であっても、居宅介護、同行援護ごとに、特定事業所加算の条件を満たさなければなりません。

同行援護で特定事業所加算を取得し職員の処遇改善を目指しましょう

算定にあたっての要件は厳しいですが、運用開始できると、収益アップが見込める体制を構築できることに加えて、ほかの事業所よりも質の高い事業所であることをアピールすることができます。利用者が質の高いサービスを受けられるだけでなく、働く職員にとっても給与などの処遇改善が望めるでしょう。ぜひ特定事業所加算の取得をご検討ください。

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