コラム

  1. トップページ
  2. コラム
  3. 算定要件
  4. 【特定事業所加算】指示・報告の算定要件を満たすために必要なことは?作成時の様式や例文も紹介

【特定事業所加算】指示・報告の算定要件を満たすために必要なことは?作成時の様式や例文も紹介

元山 ゆず香

監修者

介護福祉士

元山 ゆず香

大学を卒業後、特別養護老人ホームにて現場業務に従事。その後、福祉系大手企業に入社し、エリアマネージャーとして、施設介護事業・居宅介護事業・障害福祉サービス事業でのエリアマネジメント・行政対応を経験。また、法人本部に異動し教育部門・監査担当部門の部長を歴任。現在は全国の介護・障害福祉事業所の支援やセミナーの開催、DXO株式会社での介護関連事業の支援などを実施。

詳細プロフィール

続きを読む

訪問介護事業所が特定事業所加算を算定する際には、複数の算定要件を満たさなければいけません。数ある算定要件の中でも、特に重要な要件が「文書による指示・報告」です。

この記事では、文書による指示・報告が重要な理由と注意点についてわかりやすく解説します。また、この記事では、実際に使える文書の事例も紹介しています。特定事業所加算を算定しようと考えている方は、ぜひご一読ください。

文書等による指示・報告はなぜ必要?

特定事業所加算を算定する場合、文書等による指示・報告について正確に理解しておかなければいけません。なぜなら、特定事業所加算の算定において重要な要件のひとつだからです。

特定事業所加算には(Ⅰ)〜(Ⅴ)の5種類があり、それぞれ算定要件と加算率が異なります。特定事業所加算の算定要件は12項目あり、自事業所の状況等を考慮しながら、算定要件を満たす特定事業所加算を取得します。

12項目ある算定項目の中でも「文書による指示・報告」は、全ての特定事業所加算で求められる要件です。つまり、どの特定事業所加算を算定するにしても、文書による指示・報告は必ず実施しなければいけない業務といえるでしょう。

特定事業所加算の全容や詳しい算定要件については、以下の記事で解説しています。詳しくはこちらをご参照ください。

特定事業所加算とは?訪問介護事業所が取得するべき理由

文書等による指示・報告が必要な情報

東京都福祉局の資料「特定事業所加算の算定要件」によると、文書等による指示・報告が必要な情報の例として、以下の5つの情報を挙げています。

  • 利用者のADLや意欲
  • 利用者の主な訴えやサービス提供時の特段の要望
  • 家族を含む環境
  • 前回のサービス提供時の状況
  • その他サービス提供に当たって必要な事項

ここでは、各情報について、具体的に記載すべき内容や、記録する際の注意点などについて解説します。

参考:東京都福祉局「特定事業所加算の算定要件」

利用者のADLや意欲 

文書による指示・報告では、主に利用者のADL(日常生活動作)の状況や意欲の様子について情報を共有します。

訪問介護では、ADLを自力で行えない利用者に対して訪問介護サービスを提供することも多いでしょう。そこで、訪問介護利用者のADLの状況を記録し、訪問介護員全員で共有しておくことが重要です。

例えば、利用者のADLや意欲について情報共有できていなかった場合、訪問介護員ごとに介助方法が大きく異なってしまうかもしれません。同じ利用者に対して毎回異なる介助方法を実施すると、利用者や訪問介護員への負担が増大し、転倒などの事故につながる可能性もあります。

サービスの品質向上や転倒事故予防のためにも、ADL動作の能力や意欲に関する情報を文書で記録して共有できるようにしておきましょう。

利用者の主な訴えやサービス提供時の特段の要望 

訪問介護サービスを提供するうえで、利用者の訴えやサービス提供時の要望などは貴重な情報です。

訪問介護サービスは、利用者の在宅生活を支援するために実施されなければいけません。そのためには、普段の生活でどのようなことに困っているのか、サービス提供時にどのようにサポートして欲しいのか、といった本人の要望を確認する必要があります。

例えば、訪問介護サービスとして、入浴支援を行っていたとします。通常は、洗髪をしてから浴槽へ入っていたのですが、利用者から「寒くなったので先に浴槽に入りたい」と要望があったとします。利用者の要望を文書に記録し忘れたことで、その後も浴槽に入るのを後回しにしていました。それによって利用者が体調を崩してしまった場合、事業所への信頼を失うきっかけになるかもしれません。

利用者のちょっとした言動や要望が、事故やトラブルを未然に防ぐきっかけになることもあります。利用者の訴えや要望は文書に記録して報告しましょう。

家族を含む環境

訪問介護サービスは、利用者が住む生活環境においてサービスを提供しなければいけません。そのため、利用者の情報だけでなく家族や生活背景に関する情報を知っておく必要があります。

例えば、利用者が家族と同居していた場合、同居家族に関する情報や自宅内でのルールなどの情報は重要です。家族を含む利用者の環境を把握しておかなければ、利用者の家族やその関係者とトラブルが発生する可能性もあるでしょう。

家族を含んださまざまな情報を共有しておくことで、今後発生する可能性のあるトラブルを未然に防ぐこともできます。

サービス提供前に家族を含む環境に関する情報を文書にまとめ、各訪問介護員に指示を出しておきましょう。

前回のサービス提供時の状況

訪問介護サービスを提供した際には、サービス提供時の情報を文書に記録しておく必要があります。

訪問介護サービスでは、1人の利用者に対して複数の訪問介護員がサービスを提供する場合もあります。その際に、前回のサービス提供時の情報が重要です。

原則として、訪問介護サービスを提供するごとにサービス提供の記録を残す必要があります。さらに、記録の内容についても毎回「変化なし」といった記録ではいけません。細かい変化を見逃さず、その日の状況を正確に記録することが大切です。

利用者情報の指示と報告に関するQ&A

厚生労働省の資料「平成24年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)(平成24年3月16日)」では、文書による利用者情報の指示と報告について以下のような記載があります。

質問
特定事業所加算の体制要件として、サービス提供責任者が訪問介護員等に対して文書等による指示を行い、サービス提供終了後、担当する訪問介護員等から適宜報告を受けることとされているが、毎回のサービスごとに行わなければならないのか。
回答
サービス提供責任者は、サービス提供前に訪問介護員等に対して文書等による指示を行い、事後に訪問介護員等からの報告を適宜受けることとしているが、下図AからCまでに示す場合については、サービス提供責任者が文書等による事前の指示を一括で行い、サービス提供後の報告を適宜まとめて受けることも可能である。

 

引用:厚生労働省「平成24年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)(平成24年3月16日)」

原則として、訪問介護のサービス提供責任者は、サービス提供前に訪問介護員に対して文書で指示を出して、サービス提供後に訪問介護員から報告を受けます。

しかし、1人の訪問介護員が同一の利用者に複数回訪問する場合やサービス提供責任者が不在の場合などは、サービス提供後の報告を一括でまとめて受け取ることも可能です。

現場の状況によっては、文書による報告を毎回行えない場合も想定されます。上記の3パターンに該当する場合は、報告の頻度を柔軟に変更できるため覚えておきましょう。

指示・報告を行う際の注意点

特定事業所加算を算定している訪問介護事業所が、文書による指示と報告を実施する際には、報告の頻度や記載する事項に注意しなければいけません。ここでは、文書による指示・報告を行う際の注意点について解説します。

原則として事前の指示と提供後の報告は毎回必要

特定事業所加算を算定している事業所が文書による指示と報告を実施する場合、原則として、サービス提供の前後に毎回実施する必要があります。

サービス提供責任者からの指示を出す具体的なタイミングは、サービス提供前の時点です。担当の訪問介護員に、前回のサービス提供時の状況を踏まえた留意事項などを伝達しましょう。

一方、訪問介護員の報告については、サービス提供時の状況や利用者の要望などをサービス提供後すぐに報告する必要があります。

サービス提供責任者が不在の場合などの例外を除いて、文書等による指示・報告は、サービス提供時に毎回実施しなければいけません。基本的には、まとめて指示を出したり、一括で報告したりといったことができないため注意しましょう。

必ずしも手渡しで指示・報告する必要はない

サービス提供責任者と訪問介護員との文書のやりとりに関しては、電子的な方法を活用できます。

サービス提供責任者と訪問介護員との指示・報告を毎回手渡しで行った場合、業務負担が増大する可能性も高いでしょう。そのため、FAXやメール等による電子的な方法による情報交換も可能です。

サービス提供責任者と直接会えない環境でも、FAXやメールの活用によって算定要件を満たせることを理解しておきましょう。

個人情報の取り扱いに注意

訪問介護サービスの指示・報告に関する文書には、利用者の個人情報が多く含まれています。そのため、個人情報の取り扱いには注意しなければいけません。

報告を受けた後の文書に関しては、サービス提供責任者が記録を保存するように定められています。厚生労働省が公表している個人情報のガイドラインに基づいて記録を保管しておきましょう。

参考:厚生労働省「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」

記載する情報は具体的に

訪問介護サービス提供後の報告では、サービス提供時の状況をできるだけ具体的に記載しましょう。

頻繁に訪問介護サービスを利用している方の場合、前回のサービス提供時から大きな変化が見られない場合もあるでしょう。しかし、毎回「変化なし」と記載していると、運営指導時に注意される可能性もあります。

サービス提供後の報告は、細かい変化を見逃さず、できるだけ具体的に記載しなければいけません。介護記録をする際には、以下のポイントを意識して情報をまとめるとよいでしょう。

介護記録を書く際のポイント
  • 介護記録を書く目的を意識する
  • 5W1Hの情報をまとめる
  • 文章は簡潔に書く
  • 利用者の主張を記載
  • 住環境の変化があれば記載

サービス提供責任者が不在なら一括で指示・報告も可能

訪問介護サービス提供時には、毎回文書による指示と報告が必要です。しかし、サービス提供責任者が長期間不在になる場合もあるでしょう。その場合は、不在期間中の指示を一括で出し、その期間中の報告を一括で受け取ることも可能です。

例えば、サービス提供責任者が長期間の出張に行かなければいけない場合もあるでしょう。その際には、出張前にあらかじめ文書による指示を出しておき、出張から帰ってきた際に出張期間中のサービス提供報告を確認しても問題ありません。

ただし、サービス提供責任者が不在であった理由などの記録は必要です。サービス提供責任者不在により一括で指示と報告を行った際には、その理由まで確実に記録しておきましょう。

指示・報告のための様式は?実際の事例をもとに解説

特定事業所加算を算定する際には、文書による指示・報告を実施しなければいけませんが、具体的な様式については提示されていません。そのため、具体的な様式事例を知りたい訪問介護経営者も多いでしょう。

ここでは、自治体が独自に出している事例をもとに、指示・報告の様式事例をご紹介します。自事業所で様式を作成する際にご利用ください。

豊中市「訪問介護事業における特定事業所加算に係る留意事項について 」_「文書による指示及びサービス提供後の報告(参考様式)

引用:豊中市「訪問介護事業における特定事業所加算に係る留意事項について 」

利用者ごとに上記の記録様式を作成し、サービス提供の前後でサービス提供責任者と訪問介護員の間で指示・報告を行います。

各事業所の運営状況に応じて細かい変更は可能ですが、記載すべき情報は上記の様式を参考にするとよいでしょう。

まとめ:特定事業所加算の指示・報告要件は細かく確認

今回は、訪問介護における特定事業所加算の要件の中でも、文書による報告・指示について詳しく解説しました。

訪問介護で算定できる(Ⅰ)〜(Ⅴ)の特定事業所加算では、全ての算定要件に「文書による指示・報告」が含まれています。

文書による指示・報告とは、サービス提供責任者と訪問介護員の間で行われる情報共有を文書で記録に残すことを指しています。

サービス提供責任者は、前回の状況を踏まえた留意事項などをもとに、訪問介護員へサービス提供前に指示を出します。訪問介護員は指示に従ってサービスを提供し、サービス提供時の情報を報告します。具体的には、ADLの状況や意欲、訴えや要望などの情報を報告しましょう。

文書による指示・報告は、原則としてサービス提供ごとに実施する必要があります。しかし、サービス提供責任者が不在の場合や1日に複数回サービス提供を行う場合には、一括で指示・報告を行うことも可能です。

また、必ずしも手渡しで指示・報告を行う必要はなく、FAXやメール等の電子的な方法で報告することも可能です。ただし、電子的な方法で報告を受けた場合でも、サービス提供責任者は文章を保管しておかなければいけません。

文書による指示・報告は、特定事業所加算を算定する際に必須となる要件ですが、細かいルールも多いため正しく理解しておく必要があります。運営指導時に注意を受けないように、算定前に細かいルールを確認しておきましょう。

 

参考資料:

東京都福祉局「特定事業所加算の算定要件」

厚生労働省「平成24年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)(平成24年3月16日)」

豊中市「訪問介護事業における特定事業所加算に係る留意事項について 」

 

 

お役立ち資料:加算取得を目指す方へ

特定事業所加算における留意事項の伝達(指示)・報告の目的や要件、実地指導での指摘事例などについて詳しくまとめました。
詳しく見る

カテゴリ・タグ