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介護職の離職率の高さは、日本でも非常に高い問題となっています。主な原因としては、長時間労働、過酷な労働条件、給与の低さなどがあげられます。
給与の見直しや労働環境の改善、介護職員のトレーニングやサポートの場の提供をおこなうことで特定処遇改善加算を算定することができます。
今回の記事では、2024年に廃止になった特定処遇改善加算について振り返りながら、新たに運用開始となった介護職員等特定処遇加算について解説します。
介護職員等特定処遇改善加算とは、2019年10月から2024年5月まで運用されている介護報酬の加算制度です。介護職員の労働環境を改善し、質の高い介護サービスを提供するための取り組みの一環です。
介護職員等特定処遇改善加算は、経験や技能を持つ介護職員に対して、最低1人以上、1ヵ月あたり8万円以上の昇給をして、年収を440万円以上に維持する制度です。
介護職員の労働環境は、非常に厳しいことが多く長時間労働や過酷な業務内容が問題となっています。
人間関係や将来の見通しに不安を抱える介護職員が多く、給与が少ないことからも退職者が多いです。退職者に加えて、勤続年数の短い介護職員も多く、常に人材不足な状況です。
そこで、経験や技能を持つ職員に焦点を当てて、介護職員のモチベーション向上や仕事の定着率の向上を図るために、介護職員特定処遇改善加算が導入されました。
介護職員等処遇改善加算には、(Ⅰ)と(Ⅱ)があります。
介護職員等処遇改善加算(Ⅰ)の算定要件は以下の7つです。
職場環境等要件とは、研修の実施など、キャリアアップに向けた取り組み、ICTの活用など生産性向上の取り組みなどの実施が求められます。
以下の表の項目を満たす必要があります。
職場環境等区分 | 取組項目 |
入職促進に向けた取り組み | 1.法人や事業所の経営理念やケア方針・人材育成方針、その実現のための施策・仕組みなどの明確化 |
資質の向上やキャリアアップに向けた支援 | 5.働きながら介護福祉士取得を目指すものに対する実務者研修受講支援や、より専門性の高い介護技術を取得しようとする者に対する喀痰吸引、認知症ケア、サービス提供責任者研修、中堅職員に対するマネジメント研修の受講支援等 |
両立支援・多様な働き方の推進 | 9.子育てや家族等の介護等の仕事の両立を目指す者のための休業制度等の充実、事業所内託児施設の整備 |
腰痛を含む心身の健康管理 | 13.介護職員の身体の負担軽減のための介護技術の習得支援、介護ロボットやリフト等の介護機器等導入及び研修等による腰痛対策の実施 |
生産性向上のための業務改善の取り組み | 17.タブレット端末やインカム等のICT活用や見守り機器等の介護ロボットセンサー等の導入による業務量の縮減 |
やりがい・働きがいの醸成 | 21.ミーティング等による職場内コミュニケーションの円滑化による個々の介護職員の気づきを踏まえた勤務環境やケア内容の改善 |
令和4年度以降は、6区分すべてにおいて1項目以上の取り組みをおこなう必要があります。
介護福祉士の配置要件では、サービス種別によって人員配置に関する加算を適用していることが要件になります。
主な人員配置加算は以下の表のとおりです。
対象サービス | 適介護福祉士の配置等要件を満たす加算 |
訪問入浴介護 | サービス提供体制強化加算(Ⅰ) |
訪問介護 | 特定事業所加算(Ⅰ) |
特定施設入居者生活介護 | サービス提供体制強化加算(Ⅰ) |
介護老人福祉施設 | サービス提供体制強化加算(Ⅰ) |
療養通所介護 | サービス提供体制強化加算(Ⅲ)イ |
介護職員等特定処遇改善(Ⅱ)の算定要件は、介護職員等特定処遇改善(Ⅰ)の算定要件のうち、1、2、4〜7の6つを満たす必要があります。
介護職員等特定処遇改善加算は、経験・技能を有する介護職員と認められた介護福祉士が対象となります。
介護福祉士の資格を取得しており、同一法人において勤続年数10年以上の介護職員を基本としています。しかし、10年以上の勤続年数を有さない場合であっても、ほかの法人における経験、業務内容や技能などを踏まえて各事業所の裁量で設定されます。
「経験や技能のある介護職員」は、勤続年数に厳しい制限はありません。事業所の裁量で設定することができます。ほかの法人や事業所でに経験を踏まえて、介護現場で通算10年勤続した者を対象とすることも可能です。
しかし、どれだけ経験豊かな介護職員だとしても、介護福祉士資格を取得していない介護職員は、特定処遇改善加算の対象とはなりません。介護福祉士資格の保有が必須です。ただし、同じ事業所内に経験や技能のある介護職員がいれば、その他の介護職員も特定処遇改善加算の対象です。
パートやアルバイト職員については、対象者の雇用形態についての明記がないことから、対象外と言えず、事業所の裁量次第となっています。
対象となる職員の範囲と賃上げの額・配分ルールを見ていきましょう。
特定処遇改善加算の配分は、まず介護職員をキャリアによって3つのグループに分けます。
区分 | 内容 | |
A | 経験・技能のある職員 | 勤続年数10年以上の介護福祉士 |
B | その他の介護職員 | 勤続年数は10年未満の介護福祉士・介護職員 |
C | 介護職員以外の職員 | 相談員、施設ケアマネジャー、介護職以外の職員 |
このグループごとに以下のルールが決められています。
経験を積んで技能を高めることで賃金がアップすると、介護職員のモチベーションも高まり離職の防止や、優秀な人材の確保につながることが期待されます。
介護職員等特定処遇改善加算が廃止されたのは、制度を簡素化し、処遇改善加算の効果が得られる人を増やすためです。
2024年5月までは、処遇改善加算が3つあることで制度が複雑になっていました。しかし、煩雑な事務手続きや制度のわかりにくさから加算を申請しない事業所も多かったです。
そこで、加算を取得しやすくなるように介護職員等処遇改善加算へ一本化をおこなうことになりました。
介護職員等処遇改善加算の対象者は、介護職をはじめとした介護従事者となっています。利用者と直接かかわる職種であれば対象となります。
雇用形態にかかわらず、パート・アルバイト・派遣社員なども加算の対象者に該当します。介護職以外の看護師やケアマネジャーなどは対象外ですが、業務に支障がない程度に介護の仕事と兼務している場合は加算対象となります。
介護職員等処遇改善加算には、細かい配分ルールがありません。事業所内で柔軟に配分できます。そのため、生活相談員、看護職員、管理者も処遇改善の対象となる場合があります。
介護職員等処遇改善加算は、これまでの処遇改善制度の主な算定要件を引き継ぎ、区分(Ⅰ)~(Ⅳ)に統合されました。
一定の基準と条件を満たした事業所に対して支給され、加算率は令和6年に2.5%、令和7年度に2.0%の介護職員のベースアップにつながるように以前よりも引き上げられました。サービス類型ごとに加算率が決まっています。
介護職員等処遇改善加算での月額賃金の改善が見直され、加算額の2分の1以上を月給の改善に充てること、前年度と比較して、現行のベースアップ等加算相当の加算額の3分の2以上の基本給の引き上げをおこなう必要があります。
また、環境等要件については、介護護職員等処遇改善加算(Ⅰ)(Ⅱ)では、6区分ごとにそれぞれ2つ以上(生産性向上は3つ以上、うち一部は必須)取り組むことと、情報公表システム等で実施した取り組み内容について具体的に公表することが定められています。
介護職員等処遇加算(Ⅲ)(Ⅳ)については、6区分ごとにそれぞれ1つ以上(生産性向上は2つ以上)取り組むこととされています。
今回は特定処遇改善加算について紹介しました。特定処遇改善加算のルールは複雑なうえ、配分対象者や、配分の仕方が事業者により委ねられています。
柔軟な配分が可能な分、事業所や法人での戦略が重要になってきます。しっかりとした戦略を持ち、特定処遇改善加算を活用しながら、介護職員のモチベーションの維持・向上につながるような体制を構築しましょう。
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