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3年ごとにおこなわれる介護報酬改定は介護サービス事業者にとっての指針になります。介護報酬改定ではサービスの改定や提供体制が変わることもあります。
日々の介護の質や利用者の生活に影響を与えることもあります。
この記事では2021年度の介護報酬改定を軸に2024年度の介護報酬改定のポイントを解説しています。
介護報酬の改定が理解できると、社会や在宅介護がどのように変化しているのかが理解できるので、ぜひ参考にしてみてください。
2021年に介護報酬改定があり、その中で5本の柱となるものがあります。
その5本の柱が以下になります。
5本の柱の内容について、以下で詳しく解説をしていきますので、ぜひ参考にしてみてください。
感染症や災害の影響により利用者数が減少した場合に、状況に即した安定的なサービス提供を可能とする特例措置があります。
具体的には利用者の数が減少した月の実績が前年度の平均延べ利用者から5%以上減少している場合、3ヵ月間基本報酬に対して3%の追加加算がおこなわれました。
3%加算は特例措置として実施されたものなので、継続的におこなわれるものではありません。
介護サービス事業者に、感染症の発生及び、まん延等に関する取組の徹底を求める観点から、以下の取組を義務付けられました。施設系サービスについて、現行の委員会開催、指摘の整備、研修の実施等に加え、訓練の実施をおこなう必要があります。
感染症や災害が発生した場合であっても、必要な介護サービスが継続的に提供できる体制を構築する観点から、全ての介護サービス事業者を対象に、事業継続に向けた計画等の策定、研修の実施、訓練の実施等を義務づけられる。
災害への対応においては、地域との連携が不可欠であることを踏まえ、非常災害対策の連携が求められる介護サービス事業者を対象に、小多機等の例を参考に、訓練の実施にあたって、地域住民の参加が得られるよう連携に努めなければならない。
通所介護等の報酬について、感染症や災害の影響により利用者数が減少した場合に、状況に即した安定的なサービス提供を可能とする観点から、特例措置が設けられる。
認知症ケアシステムの取組の推進については、以下が大きく変わりました。ぜひ、参考にしてみてください。
介護サービスにおける認知症対応能力を向上させていく観点から、訪問系サービスについて、認知症ケア加算が新たに創設されました。
特養、老健施設や介護付きホーム、認知症グループホームの看取りに係る加算について、現行の死亡日30日前からの算定に加えて、それ以前の一定期間の対応について新たに評価されます。また、介護付きホームについては看取り期に夜勤、宿直により看護職員を配置している場合にも新たに評価されることになります。
医師等による居宅療養管理指導において、利用者の社会生活面の課題にも目を向け、地域社会における様々な支援へと繋がるよう留意して、関連する情報を介護支援専門員等に提供するよう努めることとする。
訪問介護の通院等乗降介助について、利用者の負担軽減や利便性向上の観点から、居宅が始点または終点となる場合の目的地間の移送についても算定可能となりました。
認知症グループホーム、短期療養、多機能系サービスにおいて、緊急時の宿泊ニーズに対応する観点から、緊急時短期利用の受入日数や人数の要件等を見直すことになります。
特定事業所加算において、事業所間連携により体制確保や対応等をおこなう事業所が新たに評価されることになります。
離島や中山間地域等の要介護者に対する介護サービスの提供を促進する観点から、夜間、認知症デイサービス、多機能系サービスについて、中山間地域等に係る加算の対象になります。
自立支援・重度予防化防止の取組は、質の評価やデータを活用しながら化学的に効果が裏付けられた質の高いサービスの提供を目標としています。以下では、自立支援・重度予防化防止の取組について詳しく解説をしていますので、ぜひ参考にしてみてください。
加算等の算定要件とされている計画要件や会議について、リハ専門士、管理栄養士、歯科衛生士が必要に応じて参加することが明確化されています。
施設系、通所系、居住系、多機能系サービスについて、事業所の全ての利用者に係るデータをCHASEに提出してフィードバックを受けて、事業所単位でのPDCAサイクル、ケアの質の向上の取扱を推進されることを評価されるようになりました。
既存の加算等については、利用者御ごとの計画に基づくケアのPDCAサイクルの取組に加えて、CHASE等を活用した更なる取組も評価されました。
施設系サービスにゆいて、利用者の尊厳の保持、自立支援・重度化防止の推進、廃用や寝たきり防止等の観点から、全ての利用者への医学的評価に基づく日々の過ごし方等へのアセスメントの実施、日々の生活全般における計画の実施を評価されるようになりました。
その他にも、施設系サービスにおける褥瘡マネジメント加算、排泄支援加算、状態改善を新たに評価する見直しもありました。
深刻な介護人材が懸念されている中、2021年の介護報酬改定では介護人材の確保と介護現場の革新に対応する内容について変更がありました。以下で、詳しく解説をしていますので、ぜひ参考にしてみてください。
特定処遇改善加算について、制度の趣旨は維持しつつ、より活用しやすい仕組みとする観点から、平均の賃金改善額の配分ルールにおける経験、技能のある介護職員は他の介護職員の「2倍以上とすること」について、「より高くすること」に見直されている。
処遇改善加算や特定処遇改善加算の職場環境改善の取組をより実効性が高いものとする観点からの見直しもおこなわれました。
テクノロジーの活用により、介護サービスの質の向上及び、業務効率化を推進していく観点から実証研究の結果等も踏まえて、見直しがおこなわれました。
利用者等への説明、同意について電磁的な対応を原則として認められる。諸機能の保存・交付について、電磁的な対応を原則認められました。運営規定等の重要事項掲示について、事業所の掲示だけでなく、閲覧可能な形でファイル等で据え置くことも可能になりました。
将来的に介護保険制度を持続させていくために制度の持続可能性を確保する必要があります。必要なサービスを確保しつつ、重点化を図る目的で複数の変更がありましたので、下記で詳しく解説をしていきます。
引用:厚生労働省「令和3年度介護報酬改定の主な事項」
療養通所介護について、中重度の要介護者の状態に合わせた柔軟なサービス提供を図る観点から、日単位報酬体系から、月単位包括報酬とされました。リハサービスのリハマネ加算、施設系サービスの口腔衛生管理体制加算、栄養マネジメント加算について廃止され、基本報酬で評価されるようになりました。
2021年介護報酬改定の5本の柱事項以外にも、変更点はあります。以下では、その他の事項についても詳しく解説をしていますので、ぜひ参考にしてみてください。
介護保険施設における事故発生の防止と発生時の適切な対応を推進する観点から、事故報告様式を作成・周知する・施設系サービスにおいて、安全対策担当者を定めることが義務付けられました。事故発生の防止等のための措置が講じられていない場合に基本報酬を減算する組織的な安全対策体制の整備を新たに評価がおこなわれる。
全ての介護サービス事業者を対象に、利用者の人権擁護、虐待の防止等の観点から、虐待の発生・再発を防止するための委員会の開催、指針の整備、研修の実施、担当者を決めることを義務付けられる。
介護保険施設における食事の基準費用額について、令和2年度介護事業経営実態調査結果から算出した額との差の状況を踏まえ、利用者負担への影響も勘案しつつ、必要な対応をおこなう。
2024年度の介護報酬改定は2021年度の改定と比べると、さらに具体的に改定されています。以下では、2021年度と比較した改定について解説をしていますので、ぜひ参考にしてみてください。
LIFEは2021年に導入されたシステムです。2021年度の活用はイマイチでしたが、LIFEは化学的なエビデンスに基づいてフィードバックされるため、施策の効果や課題などを明確にすることが期待されています。無料で使用できる上に介護報酬にも加算されるので、LIFEの導入は介護事業所にとって大きなメリットになります。
介護情報の電子化が進んだことにより、書類のやりとりが減り、データでのやりとりが実現されました。紙媒体を使う必要がなくなれば、事務作業の負担が減るうえに、利用者へのケアに集中できる環境が構築しやすくなります。
2024年度の介護報酬改定では、2021年度よりも報酬が1.59%引き上げされています。以下では、過去の報酬推移について抜粋して表にしています。ぜひ、参考にしてみてください。
改定時期 | 改定率 |
2003年度 | −2.3% |
2006年度 | −0.5% |
2009年度 | 3.0% |
2012年度 | 1.2% |
2014年度 | 0.63% |
2015年度 | −2.27% |
2017年度 | 1.14% |
2018年度 | 0.54% |
2019年度 | 2.13% |
2021年度 | 0.70% |
処遇改善に関する改定事項は、現行の介護職員処遇改善、介護職員等特定処遇改善加算、介護職員等ベースアップ等加算を統合した介護職員処遇改善の新設です。
これまでの介護職員の処遇に関する加算は制度の複雑さから、算定しない施設・事業所が一部存在しているという実情もあり、より現場での活用が促進されるよう一本化が進められました。
2024年度に財務状況の「見える化」が新設されました。コロナの感染拡大により、経営が揺らいだ施設が増えたことから、財務状況の明確化が必要となりました。
財務状況が分析できる体制を整備することにより、各事業者も経営課題を明確化でき、経営改善に良い影響を与えることができます。
介護保険法が改正される理由は、現状の介護現場や社会のニーズに合わせて制度を整備する必要があるからです。高齢者を取り巻く環境や介護に関する課題は毎年変化し、高齢化はますます加速していくため、このような変化に対応するために介護保険法には定期的な見直しが必要になります。
2006年度には地域支援事業が創設され、2012年には介護給付や給付費抑制の動きが強まり、2015年度には地域支援事業がさらに拡大したように、改定の時期にはその時代の課題に取り組みが強まります。2024年度は将来を見据えて介護人材の確保やテクノロジーの活用に対する対応力が課題となります。
この記事では2021年度の介護報酬改定の内容を基盤に2024年度の改定もピックアップして解説をしました。
2021年度の介護報酬改定では、感染症や災害への対応強化、地域包括ケアシステムの推進、自立支援・重度化防止の取組の推進、介護人材の確保・介護現場の革新、制度の安定性・持続可能な確保の5本の柱を中心に進められました。
2024年度の介護報酬改定は2021年度の改定と大きく変わらないため、大きな方向変更はありませんでした。
2024年の介護報酬改定は2021年度の介護報酬改定の内容をさらに推進していくことになるでしょう。