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実施指導とはサービスの質の確保や介護給付の適正化などを目的に、都道府県や市町村が介護事業所に出向き、運営状況や記録といった事業所の実態を確認する指導のことをいいます。
実地指導に引っかかってしまうと、ペナルティを課されるケースもあるので最低限の知識を持っていないと介護事業所を運営できなくなることもあります。また、実地指導にはよく似た監査というものもありますが、この違いについてもわからない方は多くいます。
この記事では、実地指導がおこなわれるタイミングや必要な書類、指導と監査の違いについて詳しく解説をしていますので、事業所を管理されている方は、ぜひ参考にしてみてください。
実地指導とは介護保険法に基づき、行政機関が事業所に対して適正な事業運営が実施されているかを指導するものです。また、実地指導は2022年に名称が変更になる前の呼び方で、現在は運営指導という名称に変更されています。
なぜ運営指導という名称に変わったかは、以下で詳しく解説をします
実地指導は地方自治が担当する行政指導という立場から、介護事業所が適正にサービスを提供しているかを確認や指導することを目的としています。実地指導で求められることは、介護事業所でのサービスの質の確保と保険給付の適正化です。
実地指導においては行政との積極的なコミュニケーションを図り、最適な運営を目指すために有意義に意見交換をおこなうことが大切です。
2022年度(令和4年)に、それまでの「実地指導」から「運営指導」に名前が変更されました。
変更になった理由は、指導に際しオンライン会議ツールの活用が明記され、必ずしも実地でおこなわれるものではなくなったため、名称が運営指導に変更されました。
行政機関がおこなう指導には運営指導とは別に監査と呼ばれるものがあります。監査とは事業所に運営基準違反や介護報酬の不正請求が認められる場合、そのおそれがある場合におこなわれる強制調査になります。
行政は違反や不正等の事実関係を明確にした上で、それらが認められる場合は勧告または指定取消等の行政処分を受けます。
指導はあくまで、事業所等の任意の協力によるものになります。監査には強制力がある点が最も大きな違いです。実地指導で違反や不正等の疑いがあった場合は、実地指導では立入検査ができないので、途中で監査に切り替えて事実確認をおこなうケースもあります。
実地指導では違反や不正などで引っかかるケースもあります。以下で、実地指導で引っかかった場合には、どのような手続きがとられるかについて詳しく解説をしています。ぜひ、参考にしてみてください。
実地指導の中で何らかの違反が発見された時に、その場でおこなわれるのが事実上の指導になります。また、勧告までに至らない軽微な不具合等があった場合に口頭で指導を受けた場合でも、後日書面が交付されることもあります。
事業所運営にとっては非常に重要な指摘ですが、これによって改善報告の義務が発生する訳ではありません。しかし、中には書面指導といって指導内容を記載の上で、改善や報告期限と共に改善を求められるケースもあります。
実地指導の結果、指定の際に指示した条件に反していたり、運営基準を満たさなくなっているような場合は期限を定めて是正を勧告をされる場合があります。
都道府県知事は、改善勧告をした場合において、勧告を受けた介護事業所が期限内に従わなかった時は、その事実を公表することが可能です。
公表は、地方公共団体のホームページに事業所の名称、場所、改善命令の内容を掲載する方法でおこなわれます。
都道府県知事は、勧告を受けた介護事業所が正当な理由なく勧告に関わる措置をとらなかった時は、当該介護事業所に対して、期限を定めて、勧告に関わる措置を取るべきことを命じることができます。
改善命令が出された場合は改善勧告の場合と異なり、必ず公示されます。
指定取り消しは介護事業所において最も重い処分です。介護事業所は都道府県知事から指定を受けて介護保険法上の介護事業をおこなっています。
この指定がなくなってしまうと、介護事業所は介護保険法上の介護事業を営むことができなくなってしまいます。
具体的には以下の事情が判明した場合に指定の取り消しや指定の効力停止となります。
以上が指定の取り消しや指定の効力停止になりえる事情なので、必ず守ることが大切です。
実地指導の結果、事業者が偽りその他不正行為によって保険給付を受けていたことや報酬請求の要件を欠いていたことが判明した場合には、市町村は事業所から給付の全部または一部を徴収することができます。
具体的なケースとしては、介護報酬を請求する基礎となっている介護サービスの提供が書類上で認められない場合、加算を受けているにも関わらず加算の要件を満たしていないなどが、返還金や加算金の問題に発展します。
実地指導でおこなう内容はケアマネジメントプロセスに基づくサービスが実施されているかを確認することにあります。実地指導での主な内容は大きく分けて3つあります。
以下で詳しく解説をしますので、ぜひ参考にしてみてください。
この指導では施設系サービスや居住系サービス、通所系サービスにおいてサービスを受ける利用者の生活実態の把握による確認をおこないます。
サービスの適正性の確認や高齢者虐待の手続きを経ていない身体的拘束の発見や防止について、行政機関の担当者が現場で実態を目視し、関係者から状況を聴取することが想定されています。
この指導は、サービス種別毎の基準等に規定する運営体制を確認するためにおこなう指導です。確認項目、確認文書のうち、個別サービスの質を確保するための体制に関する事項について確認し必要な指導をおこないます。
現場に行かなくても確認可能と判断される場合はオンライン会議等を活用することも可能です。
この指導は報酬基準に基づき介護保険給付の適正な事後処理を支援し、要件に適合した加算に基づくサービスの実施を支援することにより、その適合性を確認します。
加算報酬の請求については、その算定要件が満たされていても取り扱いが不十分であれば、正しい理解に基づくように改善指導をおこなう必要があります。
なお、介護報酬の基本報酬部分については、算定している単位数が実際のサービスに相応したものであるかを確認します。
実地指導は都道府県、または市町村の指定の権限を持つ介護保険施設を対象として計画的、個別に実地指導を行います。実地指導は一般指導と合同指導という2つの形があり、指導がおこなわれるタイミングは種類により異なります。
一般指導は介護保険施設に対し自治体単独で実施頻度や個別事由を考案し、毎年度計画的に実施するものです。合同実施に関しては厚生労働省が都道府県または市町村と合同で指導をおこなうので、実地指導のタイミングの調整をしてから実施されます。
実地指導では、自治体により提出の有無、その内容も異なります。以下では、主に大阪市の実地指導に必要な提出書類を記載しています。
事業所を管理されている方は、ぜひ参考にしてみてください。
提出書類は以下になります。
参考:大阪市「運営指導等に関する事前提出書類」
当日に見せる書類は以下になります。
実地指導の提出、提示書類は都道府県、市町村でも違います。実地指導を受ける前に必ず、事業所を管轄する自治体のホームページを確認しておくことも大切です。
参考:大阪市「運営指導等における当日の準備について」
実地指導では介護事業所の運営状況や記録や実態をチェックされます。自治体から通知が届いてから、実地指導に向けた準備をすることも必要ですが、日々の業務の中でコンプライアンスを遵守する体制を作っておくことが大切です。
実地指導に向けて、いつでも対応できるように提出、提示書類を徹底して準備をしておきましょう。しかし、介護保険制度や介護報酬の仕組みは複雑で全てを理解しておくことは大変です。
そのため、介護報酬の改定や介護保険制度が変わった際には小まめにチェックを欠かさず変化に対応できる体制を作っておくことが理想になります。
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