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特定事業所加算を訪問介護で算定するデメリット3つ|質の高い事業所を目指そう

元山 ゆず香

監修者

介護福祉士

元山 ゆず香

大学を卒業後、特別養護老人ホームにて現場業務に従事。その後、福祉系大手企業に入社し、エリアマネージャーとして、施設介護事業・居宅介護事業・障害福祉サービス事業でのエリアマネジメント・行政対応を経験。また、法人本部に異動し教育部門・監査担当部門の部長を歴任。現在は全国の介護・障害福祉事業所の支援やセミナーの開催、DXO株式会社での介護関連事業の支援などを実施。

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訪問介護の特定事業所加算は、取得する事業所にとって様々なメリットがあります。ただ、その一方でデメリットがあることも忘れてはいけません。

この記事では特定事業所加算取得のデメリットに焦点を当て、その対策とメリットとの比較をおこないます。特定事業所加算算定を迷っている事業所が、不安を払拭し、経営を安定化するためのヒントになれば幸いです。

訪問介護における特定事業所加算とは

訪問介護における特定事業所加算は、質の高い訪問介護サービス事業所を評価するため、2006年の介護報酬改定に設けられた加算です。訪問介護事業所のうち、人材の質の確保やヘルパーの労働環境の整備、中重度の利用者への対応などに積極的に取り組む事業所が加算の対象となります。特定事業所加算を取得することで、より多くの報酬を得られるような仕組みができました。

特定事業所加算はその取り組み状況によって、ⅠからⅤまで5段階あり、得られる報酬も異なります。区分ごとに設定された単位数は以下の通りです。

加算区分加算率(所定単位数に対する割合)
加算Ⅰ所定単位数 × 20 / 100
加算Ⅱ所定単位数 × 10 / 100
加算Ⅲ所定単位数 × 10 / 100
加算Ⅳ所定単位数 × 3 / 100
加算Ⅴ所定単位数 × 3 / 100

2024年の報酬改定では算定率の低かった従来の加算Ⅳが廃止され、従来の加算Ⅴが加算Ⅳとなりました。

そして、新たな要件で加算Ⅴの区分が設定されました。新しい加算Ⅴは、中山間地域などにある事業所がサービスを継続するために設けられた区分です。都市部と違い、人材確保や業務効率化の難しい中山間地域でも訪問介護サービスを継続することをねらいとしています。

新区分により、事業所の規模に関わらず、より多様な事業所が加算取得できるようになりました。訪問介護は基本報酬単価が2024年の改定で引き下げられているため、加算取得は事業所経営の安定化のためにもますます重要なポイントになっています。

もちろん特定事業所加算の効果は、経営状況を安定させるだけではありません。質の高いサービスを提供することができ、利用者の満足度向上や職員の待遇改善にもつながるなど、様々な効果が期待されます。

では、その一方で、特定事業所加算を算定することのデメリットはないのでしょうか。次の章で解説します。

特定事業所加算を訪問介護で算定するデメリット3つ

訪問介護事業所が特定事業所加算を算定するデメリットは主に3つあります。

1. 返還のリスク

特定事業所算定のデメリット、1つは報酬返還のリスクがあることです。特定事業所加算は算定要件が非常に多く、記録などの書類整備も必要です。算定に必要な要件をひとつでも満たせなかった場合は、報酬返還となるリスクがあります。

仮に加算Ⅰを取得していた事業所が、記録の不備などから特定事業所加算返還を求められたとします。加算率は所得単位数の20%分ですので、最悪の場合、全利用者で算定していた加算分を全て返還しなければいけません。

看取りの実績や、要介護4以上の利用者の割合が基準以下の場合など、利用者の状況も含め正しくカウントする必要があります。どの区分が適切なのか状況に応じて判断しなければいけません。

特定事業所加算で上位の区分を取得している事業所で算定要件上の不備があると、経営上にも大きな影響があります。運営指導や監査で指摘されることがないよう、記録・帳票の管理は徹底することが必要です。

2. 加算の維持が大変

デメリットの2つめは加算の維持が大変なことです。特定事業所加算算定のためには、職員個別の研修計画や定期的な研修開催、会議の定期的開催、職員への情報伝達やサービス提供毎の報告などが必要です。これらの項目は全ての区分において必須となっています。

全ての訪問介護員を対象とした定期健康診断など、コストが必要な項目もあります。

訪問介護員は常勤よりも非常勤の職員が多く、勤務時間やモチベーションも人それぞれです。全職員を対象とする要件が多いため、これらを管理し、徹底、チェックすることは運営側にとっては非常に大きな負担となります。

さらに、区分によっては24時間の連絡体制も必要です。非常勤職員が多い訪問介護事業所で24時間連絡体制を整えるためにはある程度の事業所規模が必要ですし、特定の職員に過剰な負担がかかる可能性もあります。負担を分担しながら無理なく継続できる体制づくりも、加算の維持のためには重要です。

要件を満たし続けなければ、特定事業所加算を維持し続けることはできません。まずは事業所内でのルールを明確化し、確実に算定要件を満たせる体制を作ることから始めなければいけません。

3. 利用者の負担が発生

特定事業所加算を算定するデメリットの3つめは利用者の負担が発生することです。

加算による事業所の収益増は、裏を返せば利用者の負担が増えることを意味します。介護保険の利用者負担は1割から3割ですが、特定事業所加算Ⅰを算定する場合であれば自己負担は1.2倍となります。長期的にサービスを利用するとなると、この負担は利用者側にとっては重い負担になります。

例外なく全ての利用者に対して算定しなければいけないため、利用者やその家族及びケアマネジャーに対して、丁寧な説明が必要です。また、加算が追加される分、利用者から見れば料金値上げとなるため、サービスの質に対する目も厳しくなります。

事業所選択の際に、自己負担の多い事業所を避けて加算のない事業所を選択する事例もあり、新規利用者獲得の機会を逃す場合もあります。

利用者の負担増加は事業所側にとってのデメリットでもあります。利用者の負担が増えることについて、デメリットではなく、利用者側にどのようなメリットがあるかを、利用者目線で具体的に説明することで理解を得るようにしましょう。

特定事業所加算のデメリットを3つ解説しました。デメリットもありますが、それを上回るメリットがあります。次の章では加算取得のメリットの側面を解説します。

特定事業所加算は訪問介護事業所の評価を高める!加算のメリットを解説

訪問介護事業所にとっての特定事業所加算取得のメリットを3つ解説します。

事業所の評価が高まる

特定事業所加算取得のメリット、ひとつは事業所の評価が高まることです。

特定事業所は、訪問介護事業所のサービスの質を示すひとつの基準となります。一定以上の品質を期待でき、ケアマネジャーや地域包括支援センター、医療機関などからの評価が向上し、新規利用者獲得にも大いに役立ちます。

特定事業所を取得していることを積極的にアピールすることにより、他事業所との差別化戦略でも優位に立つことができます。

経営の安定化が図れる

特定事業所加算取得のメリット、2つ目は経営の安定化が図れることです。

訪問介護は今回の報酬改定でもマイナス改定となり、経営に課題を抱えている事業所が増えています。事業所閉鎖・倒産なども過去最高ペースで増えており、特に小規模な訪問介護事業所が淘汰される傾向にあります。

経営の安定化のためには特定事業所加算は有効な解決手段となります。加算による収益増を職員の待遇改善やサービスの質の向上、業務効率化のための設備投資などに回すことも可能です。

スタッフの定着や確保につながる

特定事業所加算取得のメリット、3つ目はスタッフの定着や確保につながることです。

特定事業所を取得するための必須要件として、個別研修計画や定期的な研修開催、健康診断の全員実施などがあります。これらは、訪問介護事業所に勤務する職員にとって魅力的な条件になります。質の高いサービスを提供したい、フォローアップ体制が充実した事業所で働きたい、という方は特定事業所に魅力を感じます。

特定事業所加算の取得が、職員にとって働きやすく魅力的な環境づくりにも好影響をもたらし、結果として、職員の採用や定着にも大きな追い風となります。

訪問介護の特定事業所加算はデメリットもあるがメリットが大きい

訪問介護の特定事業所加算算定のデメリットについて解説しました。

事業所にとってのデメリットもありますが、それを大きく上回るメリットがあることがわかります。デメリットやリスクも十分理解し、メリットを最大化することが重要です。特定事業所加算を活用することで、サービスの質の向上と経営の安定化を実現できます。

まだ特定事業所加算を取得していない事業所は、まずは下位区分の加算取得からスタートし、確実なステップアップを目指しましょう。

お役立ち資料:加算取得を目指す方へ

訪問介護の事業者向けに、各種加算と減算の要件や、優先的に取得するべき加算などについて、わかりやすくまとめました。
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