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【令和6年最新版】訪問介護における特定事業所加算の算定要件とは

元山 ゆず香

監修者

介護福祉士

元山 ゆず香

大学を卒業後、特別養護老人ホームにて現場業務に従事。その後、福祉系大手企業に入社し、エリアマネージャーとして、施設介護事業・居宅介護事業・障害福祉サービス事業でのエリアマネジメント・行政対応を経験。また、法人本部に異動し教育部門・監査担当部門の部長を歴任。現在は全国の介護・障害福祉事業所の支援やセミナーの開催、DXO株式会社での介護関連事業の支援などを実施。

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特定事業所加算とは、訪問介護で算定できる加算のひとつです。個別研修の実施や重度者対応などの取り組みを評価する加算で、これから算定しようと考えている事業所も多いでしょう。しかし、特定事業所加算には複数の算定要件があり、ルールが複雑な点には注意しなければいけません。

この記事では、特定事業所加算の算定要件について詳しく解説します。令和5年時点の最新情報をもとに解説しているため、これから特定事業所加算を算定する事業所の経営者にとって必見の内容です。この記事を読むことで、特定事業所加算を算定する際の注意点も理解できます。

訪問介護における特定事業所加算とは

特定事業所加算とは、質の高いサービス提供をおこなう訪問介護事業所が算定できる加算です。特定事業所加算には、特定事業所加算(Ⅰ)〜(Ⅴ)の5種類があり、それぞれ3%〜20%の加算率が設定されています。

特定事業所加算を算定することで、事業所は収益の改善が見込め、加算に伴う収入増により従業員の賃金向上や人材採用の促進が期待できるでしょう。また、算定している事業所のサービス品質をアピールする証となり、利用者や関係者からの信頼獲得にも繋がります。

一方で、加算取得には複雑な要件があり、継続的な加算取得や新たな加算取得に手間がかかること、また利用者の金銭的負担が増加するデメリットには注意しなければいけません。特定事業所加算は、収益改善とサービス品質の向上を目指す訪問介護事業所にとって、算定するメリットが大きい加算です。

各区分の算定要件と加算率

特定事業所加算の算定要件は、特定事業所加算(Ⅰ)〜(Ⅴ)ごとに求められる算定要件と加算率が異なるため注意しましょう。各加算の算定要件と加算率は以下の表をご参照ください。

算定要件
(加算率)


(20%)


(10%)


(10%)


(3%)


(3%)

1.訪問介護員等・サービス提供責任者ごとに作成された研修計画に基づく研修の実施

2.利用者に関する情報またはサービス提供に当たっての留意事項の伝達等を目的とした会議の定期的な開催

3.利用者情報の文書等による伝達、訪問介護員等からの報告

4.健康診断等の定期的な実施

5.緊急時等における対応方法の明示

6.病院、診療所又は訪問看護ステーションの看護師との連携により、24時間連絡できる体制を確保しており、かつ、必要に応じて訪問介護をおこなうことができる体制の整備、看取り期における対応方針の策定、看取りに関する職員研修の実施等

〇*¹

 

〇*¹

  

7.通常の事業の実施地域内であって中山間地域等に居住する者に対して、継続的にサービスを提供していること

    

8.利用者の心身の状況またはその家族等を取り巻く環境の変化に応じて、訪問介護事業所のサービス提供責任者等が起点となり、随時、介護支援専門員、医療関係職種等と共同し、訪問介護計画の見直しをおこなっていること

    

9.訪問介護員等が以下のいずれかを満たす

  • 介護福祉士の占める割合が30%以上
  • 介護福祉士、実務者研修修了者、介護職員基礎研修課程修了者、1級課程修了者の占める割合が50%以上

〇*²

   

10.全てのサービス提供責任者が以下のいずれかを満たす

  • 3年以上の実務経験がある介護福祉士
  • 5年以上の実務経験がある実務者研修修了者、介護職員基礎研修課程修了者、1級課程修了者

〇*²

   

11.常勤のサービス提供責任者を配置し、基準を上回る数の常勤のサービス提供責任者を1人以上配置

  

〇*³

〇*³

 

12.訪問介護員等の総数のうち、勤続年数7年以上の占める割合が30%以上

  

〇*³

〇*³

 

13.利用者のうち、要介護4以上、日常生活自立度Ⅲ・Ⅳ・M、たんの吸引等を必要とする利用者の占める割合が20%以上

 

  

14.看取り期の利用者への対応実績が1人以上であること

〇*¹

 

〇*¹

  

*¹:算定要件13または算定要件6および14を満たす場合に算定可能
*²:算定要件9または算定要件10を満たす場合に算定可能
*³:算定要件11または算定要件12を満たす場合に算定可能

参考:厚生労働省「令和6年度介護報酬改定の主な事項について

訪問介護の特定事業所加算の算定要件

計画的な研修の実施

訪問介護の特定事業所加算を取得するためには、計画的な研修を実施する必要があります。研修は訪問介護員とサービス提供責任者の資質向上のために研修の「目標」「内容」「期間」「実施時期」を定めた計画を策定しなければなりません。

個別研修計画の立て方について詳しく知りたい方は以下の記事をご確認ください。
【特定事業所加算】個別研修計画の立て方を解説!事例と書式も紹介

会議の定期的開催

訪問介護の特定事業所加算を取得するためには、利用者に関する情報やサービス提供に当たっての留意事項の伝達などを目的とした会議を定期的に開催する必要があります。

会議には職員全員の参加が求められるほか、議事録を残しておく必要があります。会議開催の期間として、おおむね1ヵ月に1回以上の開催が必要です。また、テレビ会議を活用しておこなうことも可能です。

定期的な会議の議事録例について詳しく知りたい方は以下の記事をご確認ください。
【特定事業所加算】定期的な会議開催の算定要件を満たすためには?開催方法や議事録の様式例も解説

利用者情報の指示・報告

訪問介護の特定事業所加算を取得するためには、サービス提供責任者から訪問介護員などに、利用者の情報やサービス提供に当たっての留意事項を伝達し、サービス提供終了後に担当した職員から報告を受けることが必要です。

指示・報告を作成する際の様式について詳しく知りたい方は以下の記事をご確認ください。
【特定事業所加算】指示・報告の算定要件を満たすために必要なことは?作成時の様式や例文も紹介

定期健康診断の実施

訪問介護の特定事業所加算を取得するためには、定期健康診断の実施が必要です。労働安全衛生法の規定に基づいて、すべての従業員に対して実施しなければいけません。さらに、少なくとも1年以内ごとに1回の健康診断を、事業主の費用負担で実施することが義務付けられています。

健康診断の要件を満たす4つのポイントと注意点について詳しく知りたい方は以下の記事をご確認ください。
【特定事業所加算】健康診断の要件を満たす4つのポイントと注意点を解説

緊急時等における対応方法の明示

緊急事態発生時における対応方法とは、当該事業所における緊急時等の対応方針、緊急時の連絡先および対応可能時間等を記載した文書を作成し、それらの内容を利用者に交付して、説明することです。利用者に交付する重要事項説明書に内容を明記するだけでも問題ありません。

緊急時における対応方法のQ&Aについて詳しく知りたい方は以下の記事をご確認ください。
特定事業所加算の算定要件!緊急時の対応を利用者に明示する方法

看取り期の利用者への対応

加算Ⅰもしくは加算Ⅲを算定する場合、看取り期における対応方針の策定や、対応実績等が求められます。この要件は2024年度の介護報酬改定で新設された要件で、従来からある要件の重度利用者の割合を満たしている場合は、代わりに適用することが可能です。

看取り期の対応実績として1人以上の利用者がいることが求められますが、前年度に対応実績がなかった場合、対応実績が発生した次月から算定が可能になります。ただし、3ヵ月以上連続して対応実績がなかった場合、次月から算定ができない点に注意しましょう。

また、前年度中に一度でも対応実績がある場合は、当該年度中に実績がなくとも通年算定が可能です。

中山間地域等に居住する者へのサービス提供

加算Ⅴを算定する場合、中山間地域等におけるサービス提供が求められます。

中山間地域とは、山間地およびその周辺の地域のことを指します。中山間地域へのサービス提供では、事業運営の非効率化など負荷が生じるため、適切な評価を目的に2024年の介護報酬改定にて要件が追加されました。

訪問介護員等の有資格者割合とサービス提供責任者の実務経験年数

加算Ⅰおよび加算Ⅲを取得する場合、訪問介護員等の有資格者割合およびサービス提供責任者の実務経験年数に関する要件が求められます。

具体的な割合や年数は下記の通りです。

  1. 訪問介護員等における有資格者の割合
    ・介護福祉士の占める割合が30%以上
    ・介護福祉士、実務者研修修了者、介護職員基礎研修課程修了者、1級課程修了者の占める割合が50%以上

  2. サービス提供責任者の実務経験年数
    ・3年以上の実務経験がある介護福祉士
    ・5年以上の実務経験がある実務者研修修了者、介護職員基礎研修課程修了者、1級課程修了者

加算Ⅰの場合は要件1と2どちらも、加算Ⅲの場合はどちらかのみ満たす必要があります。

サービス提供責任者の配置および訪問介護員等の勤続年数とその割合

加算Ⅲおよび加算Ⅳを取得する場合、訪問介護員等の有資格者割合およびサービス提供責任者の実務経験年数に関する要件が求められます。

具体的な割合や年数はそれぞれ以下の通りです。

サービス提供責任者の配置

  • 常勤のサービス提供責任者を配置し、基準を上回る数の常勤のサービス提供責任者を1人以上配置

訪問介護員等の勤続年数とその割合

  • 訪問介護員等の総数のうち、勤続年数7年以上の占める割合が30%以上

重度要介護者等対応

加算Ⅰもしくは加算Ⅲを算定する場合、サービスの利用者について以下の要件を満たす必要があります。

利用者のうち、要介護4以上、日常生活自立度Ⅲ・Ⅳ・M、たんの吸引等を必要とする利用者の占める割合が20%以上

まとめ:特定事業所加算の届出前に算定要件を要確認

この記事では、訪問介護における特定事業所加算の算定要件についてわかりやすく解説しました。訪問介護の特定事業所加算は、質の高いサービス提供をおこなう事業所が算定できる加算です。特定事業所加算Ⅰ〜Ⅴの5種類があり、それぞれ3%〜20%の加算率が設定されているため、算定要件を満たしている事業所は積極的に算定しましょう。

各要件の内容を確認して、算定可能か判断しましょう。特に、特定事業所加算の併算定条件や勤続年数の計算方法には注意が必要です。

この記事で得た情報をもとに、自事業所は算定要件を満たせるのか判断して、積極的に特定事業所加算を算定していきましょう。

お役立ち資料:加算取得を目指す方へ

訪問介護の事業者向けに、各種加算と減算の要件や、優先的に取得するべき加算などについて、わかりやすくまとめました。
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